しばらく前ですが、とある漢方薬局の先生が書かれた文章を読む機会がありました。それを書かれた先生が師となる先生と初めてお会いしたときの話なのですが、師となる先生は何も聞かずに自分のことをひと目見て「あなたは〇〇湯」といきなり言ったので驚いた、というような内容でした。
それだけすごい先生だったという話なのでしょうが、私はこの話を読んで以前に昭和の漢方の大家であった大塚敬節先生が書かれた豊浦元貞という江戸時代の漢方医の話を思い出しました。
豊浦元貞が門人にあてた手紙をまとめたものが「豊浦遺珠」という書物になって残っているのですが、その中で元貞が「医者は下手をつとめなければならない」と言っており、大塚敬節先生がそれに共感されているのです。
大筋をまとめると、「世の中には不問診の大家と称して、顔をみるだけで病気がわかるとか、脈だけで病気がわかるとか、いかにも上手らしく名人らしく振る舞うものがいるが、自分は脈をみて腹をみて、飲食の多少、口渇の有無、大小便の通利の状態、色までもたずね、また気分の良し悪しなどを細かくたずね尽くして、そのあとで初めて診断をするようにしている。上手らしく名人らしくやろうとするからかえって病気が見えない。自分は下手をつとめ、名人になろうとは夢にも思わない」と、元貞は門人に常々言っていたそうです。
大塚敬節先生は「下手をつとめるとは、誠をつくすことであり、誠をつくすことが名人への道である」と結んでいます。
漢方の業界にいるとすごい先生は確かにいらっしゃって、鋭い洞察力でピシャリと言い当てる場面を幾度か目にしてきましたが、私はそういうことをする勇気もないし、そんな能力もありません。この話を思い出し、凡人の自分はあらためて「下手をつとめる」ことに徹しようと思って励んでおります。
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