2012年7月19日木曜日

全部が「体質」からくるわけじゃないよね

今年の北大薬学部での講義スライドはこんな感じ。


そういえば薬学部での講義も無事に?終わってホッと一息。
連休中は一緒に勉強している仲間たちの北海道旅行に同行しました。それらの話はまた今度。

さて、患者さんと話をしていて思ったこと。

漢方は体質医学と言われることがあります。

しかし、病気には体質からくるものもあれば、人体の構造からくるものもあります。

例えば、腰痛や坐骨神経痛には、冷えや血流障害などに起因する体質的なものもある一方で、体質と関係なく進行状態に応じてどんな人でも同じような薬が適するものもあります。

骨粗鬆性の膝関節症などは、ほとんど体質とは関係なく、どんな人でも進行状態に応じて同じような薬が適するものです。

東洋医学的な判断に基づかない漢方を「病名漢方」と揶揄することがありますが、病名漢方でも効く病気があります。

それは、「体質」という個性によるものではなく、同じ人間としての「構造」による病気もあるということだと思います。

そして、体質によるものと構造によるものでは養生の仕方がまったく違うと思います。

わかったような、わからないような話ですが、全部が体質と考えている一部の専門家に気がついて欲しいなと思ったので。


CSS Nite in SAPPORO, Vol.5

2012年7月12日木曜日

甲状腺機能と漢方

甲状腺機能の亢進症・低下症も漢方で諸症状が改善されるケースは珍しくありません。

なかなか最初は苦労しましたが、何例も調べているうちにやはり特徴的なものがあるなと感じています。

大学生の頃に買った「漢方診療医典」の目次にも
甲状腺の病気が書かれています。


健康診断などで甲状腺機能に何か問題がみつかったら、やはり専門医にかかるのが大事だと思います。
専門医のご講演を聴く機会があったのですが、服用のリスクも考え、必要最小限のお薬を上手に使われていることがわかります。

あるご相談にこられた患者さんは、甲状腺機能低下症で近くの内科医からお薬を長くもらっていました。

それほど激しくはありませんでしたが、体調不良でご相談にこられたときにそのお薬のことを聞き、これは漢方で対応するよりも一度専門医を受診して本当にそのお薬が必要か相談してみてはどうかとお勧めしました。

受診してみた結果、服用の必要はないですよとのこと。
休薬して経過をみていくと、体調は回復してきている様子でした。この例では、それほど必要のないお薬を服用し続けることで、かえってバランスがとれなくて体調が不安定になった結果だと思われます。

漢方の出番はどこかと言えば、検査結果から専門医の判断でお薬を服用する必要がないと言われたが、それなりに自覚症状があって日常生活に影響がある場合だと思います。まだまだ認知されていないので、それほど多くの数ではありませんが、症状が改善された患者さんを何例も経験しています。

ある50代の女性は、数年前に甲状腺機能低下(橋本病)の診断を受けましたが、専門医の判断として今すぐに治療する必要はないとのことで定期受診のみでした。
疲れやすく、眠くなり、動悸や息切れがあります。喉の違和感と軽い腫れぼったさを感じていられました。

症状と現在までに経験した内容からある漢方薬と利水作用を助ける補助剤をおすすめしたところ、1ヶ月ほどで動悸はほとんどなくなり、それから徐々に喉の違和感もなくなってきました。3ヶ月ほどしてほとんどの症状がなくなりました。

西洋医学的に専門医の判断で治療する必要はない境界型の場合には漢方が力になれることはまだまだあり、もっと研究をして行きたいと思っています。