2014年9月10日水曜日

ぎっくり腰の漢方治療

この数ヶ月ほど、漢方相談のご予約が混みあっております。
新規のご相談のお客様にはご迷惑をおかけしておりますが、だいたい2週間ほど先を目処にご予約をいただけると対応できると思いますのでご了承くださいませ。

さて先日のこと。

ある患者さんから電話があり、ぎっくり腰になってトイレに行くのも這って行くほどで、漢方でなんとかできないかとのこと。
急ぎ、合間の時間にご相談を承りました。
病院で出た鎮痛剤をすでに服用していらっしゃいましたが効果が見られない様子。

もちろん薬局にいらっしゃるのにも大変で、すり足でゆっくりと来られました。

ぎっくり腰は自分のも含めて漢方で何度も治しているので、検討してみました。
急性期に多いパターンというものがあり、たくさん見ているとわかります。

愁訴部の状態を調べ、本治部とみられる腰椎部分には膀胱経の陽証に対してのある漢方薬を選び、脊柱起立筋に現れている経筋証に対しての補助をひとつ選びました。
検討したのが夕刻だったので寝るまでにこのくらいの時間間隔で服用してくださいね、とお話しました。
明日になっても痛みが一向に取れないようならまた電話くださいね、と念のために対応できる体制も整えてお帰ししました。

大丈夫かな…と思いつつもバタバタと翌日も混みあっておりました。

お電話がありませんでしたが、午後になってご本人がひょっこりいらっしゃいました。
スッスッと普通に歩いて。

経過を伺うと、指示通りに漢方を飲んで翌日には痛みの度合いがかなり軽くなり、無事に仕事も休まずに行けましたとのことで大変喜んでくださいました。
前日の痛みが10としたら、今日は2くらいですと。

漢方薬も急性症状でもピタッと合えば速く効きます。

現在のように慢性疾患の患者さんのご相談で予約がビッシリになっていると、どうしても急なもの(風邪やぎっくり腰など)のご相談を受ける余裕がないのですが、たまにはこういった経験も嬉しいものですね。

この患者さんは元々は年季の入った五十肩の漢方治療をしていました。そちらもだいぶ経過が良く、日常生活に支障がなくなり、痛み止めを服用しなくても生活できるようになったので、ぎっくり腰も漢方で…と思われたようです。


からさわ薬局の漢方相談は完全予約制です。




2014年4月2日水曜日

甲状腺機能と漢方(続)

以前に「甲状腺機能と漢方」という題で書いたことがありますが、その続編です。

思ったよりアクセス数があったので気になっている方が多いのだと思います。特に北海道は専門医のところはいつも混み合っているようですし。

漢方の出番については、前の記事ではかなり消極的な書き方をしておりますが、その後に経験した症例から、漢方もうまく使うと日常生活の不快な症状をかなり緩和できることがわかってきました。

特にご相談にこられるのは甲状腺機能低下症・橋本病の患者さんです。インターネット上の情報をみてみると、代謝が不活発になるのでよく温・補の漢方薬が書かれていますが、実際に臨床でやってみるとそうではありません。甲状腺には特徴的な薬方の適応する状態があり、どの患者さんにも多かれ少なかれ同様の反応がみられます。これをうまくみつけて薬方を選んでいくと、動悸やだるさも落ち着くことがわかってきました。

また、甲状腺がんの術後の患者さんの状態をチェックする機会がありましたが、やはりその患者さんでも同様の反応があり、ちょっとした工夫をして漢方薬を選んでみると術後の声のかすれや違和感がかなり短期間でも改善してくるのが確認できました。

もっと多くの患者さんで調べる機会があれば、より確実なものになっていくのではないかなと考えています。甲状腺にも漢方で力になれることがあると思います。気になる方はどうぞ遠慮なくご相談ください。


からさわ薬局の漢方相談は完全予約制です。こちらをご覧になってご検討ください。

2014年3月31日月曜日

腰痛・坐骨神経痛の漢方治療

だいぶ古い話になるが、自分のぎっくり腰を漢方で急速に改善することができた経験があって、それから漢方でたくさんの腰痛を治してきた。




湿布と鎮痛剤と筋弛緩剤と…っていう西洋医学の治療に比べたら遥かに漢方の治療は緻密ですごいものだと思うし、それなりに自信も持っていたのだった。

しかし、なかなか治せない患者さんが何人か出てきた。
熱心にやってくれているが、ちょっと良くなってもまた戻る。困ったな…と思って色々と試行錯誤していたところ、ある腰痛の症例をチェックしていた時にふと気がついたことがあった。「なんだろうこれ…」と思って色々と解析方法を考えていたところ、閃いて解析方法に工夫をしてみた(「え、なになに?解析っていったいどうやってんの!?」という方はこちらを

すると、非常に近接した勢いのところにある腰痛の陽証と陰証の二つの状態がハッキリと区別して捉えることができた。
ハッキリと別なものと感じられた二つの証に対応するそれぞれの薬方を調べ、それらを時間差服用にして治療してみたところ、わずか一週間の漢方治療でグッと痛みが減ったとの報告を受けた。経過をチェックしてみるとかなり良い。

すぐに、他の改善の遅い患者さんで同じ方法で解析をしてみた。やはり、近接した陽証と陰証の二つがあった。2つの治療点に分解しなおし、時間差服用の治療に変更したところ、短期間に坐骨神経痛の状態が明らかにやわらいだと教えていただいた。

愁訴部を大きくみるのも大事だが、腰椎の何番に(L1〜L5)どのくらいの勢いで陽証がある、どのくらいの勢いで陰証があると細かく絞っていくと小さな見落としがなくなる。問診から症状のメインが陰証だろうとわかっていても、浅い陽証があればそれらを兼用治療にしないと経気の流れは正されず、改善しないところが出てくる。症状だけではやはりわからない。

※例えば慢性化した坐骨神経痛を伴う腰痛などは修復機能に関係する陰証がメインであり、急性症状はまだ浅く陽証がメインとなる。

もっともっと高い確率で治せるようになりたい。
自分の能力を過信せず、伸びしろを感じながらますます漢方の力の良いところを感じていただけたら嬉しいなと思っている。

からさわ薬局はこれから腰痛にもっと強くなるのである。



2014年1月25日土曜日

四十肩、五十肩の漢方治療

以前に、自分が四十肩になって漢方を飲んだことを書いたことがある。

一昨年のことだが、すっかり良くなって忘れていたら、昨年末に寒さにあたってかどうか軽く痛みが出てきた。とはいえ、かなり軽い状態なので、自分で薬を検討して以前に使った煎じ薬をエキス剤と補助剤の組み合わせで1日2回飲んでいたら、もう忘れてしまった。ゼロにはなっていないようだから、ここでもう少しまじめに漢方を飲むとまたしばらく再発する可能性は低いだろうと思う。

自分の治療で、教科書通りの薬方で効ききらないところもわかったので今は一工夫をしている。

ある男性の患者さん、ちょっと重たいものを運んで突発的に出てきた肩関節痛だったが、これは私の四十肩の漢方を応用して短期に痛みがとれた。北海道ならではの「除雪」という重労働があるので、大丈夫かな…?と思っていたが、先日お会いしたら「おかげさまでなんともないです!」とのことだった。

漢方も早いうちがいちばん良い。

少し年季の入った四十肩・五十肩になると、もうちょっと改善が遅い。じわじわであるが、2週間くらいの相談ペースでみていても「前回より少し腕があがる」とか「重だるい抜けそうな痛みはほとんど出なくなってきました」というように、症状の幾つかが少しずつとれてきて患者さんは自信を持つ。

ここ数年、風邪で仕事を休んだことがないが、風邪はちょこちょこひいている。
ひいたかな?という時点で適方を調べてさっさと治療するので、だいたいは翌朝くらいにはほとんど症状がなくなっている。風邪も時期を逃すと治しにくい。

漢方に相談にくる患者さんというのは、だいたいがあっちに行ってもこっちに行ってもダメだった人が多いので、早期に手を打つという場面にはなかなか出会わないが、たまたま何度か漢方を経験している患者さんで信頼関係のある方々は、早々にご相談をいただけるので、実に早く解決することが多い。

アレルギー性鼻炎などもそうで、この人はこれが効く、というパターンを見つけておくと、すぐに手を打てるのでひどくならないで済むことが多い。

完全予約制というのは、中途半端な気持ちの人がこられないようにという「敷居」だが、あまり難しく考えずに早々に相談してもらえるのが一番である。

からさわ薬局の漢方相談はこちらから。


2014年1月24日金曜日

ある日の漢方屋の一日。

漢方薬ってどんな病気に効くのか、これを聞いてみるとかなりバラバラなイメージを持っているものだ。

大学で講義をするとき(筆者は北海道大学薬学部の医療概論で漢方薬と薬剤師の接点に関して毎年講義をしている)、漢方医学の概要についてもサラッと触れるのだが、漢方の適応範囲については学生も漠然としたイメージしか無い。
昨年あたりからは「漢方診療医典」(大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎/南山堂)の目次に書かれている疾患名をスライドでみせている。結構な適応疾患の数にびっくりしている様子がわかる。

じゃあ漢方屋の一日はどんな感じか。


筆者の薬局は漢方相談完全予約制であるので、予約のない飛び込みの相談は一切受けていない。たまに店にフラッと入ってきて「漢方のことで聞きたいのですが」という方がいらっしゃるのだが、「予約制ですので申し訳ございません」とスタッフがお断りすることになる。受けてあげたいが、それを受けているとキリがないし、うちの方針について理解していない人に毎回一から説明するほどのヒマはない。

さて、予約相談はリピートの患者さんで20〜30分(相談してご提案したお薬をお出しするまで)かかる。新規のご相談は問診に時間がかかるため、1時間〜1時間半くらいかかる。

午前中は3〜4名前後の予約。午後は4名〜7名前後。空き時間には遠方の患者さんや、事前にメールや電話で経過を伺った患者さんの次の提案を検討したり、仕込をしたりでなんだかんだと時間が足りない。
何でも売っていた頃は従業員もそこそこいたので昼休みは交代だったが、今はほとんど漢方一本にしたため、効率をとって昼休みは薬局を閉めている。

それでは、ある日の漢方屋の一日。


午前一人目。うつ病。
経過は良い様子。不安、動悸などもほとんどない。睡眠はまだ若干の波がある。
漢方の方向性は良さそう。細かい見落としがないか検討して養生の重要点のみ確認。

午前二人目。高血圧症と膝の痛み。
膝の方は先にとりかかっていたのでほぼ改善しており、来局の途中も痛みなし。地下鉄の階段もゆっくりだが痛まず。血圧は、相談当初170〜180mmHgだったのが、ここ数週間は120〜140mmHg(毎朝の血圧を記録してもらっている)。血圧の方は手を抜かず、膝の方は必要最小限に。

午前三人目。掌蹠膿疱症。
足の方が若干改善が遅いが、手の方はパッと見てもほとんど膿疱はわからない。顔を近づけてみるとわずかに膿疱の痕跡がまだみられる。経過は良好と考え、細かい漏れがないか検討。

午前四人目。アトピー性皮膚炎。
なかなか手ごわい。冬季のため、燥証がなかなか改善しない。落屑が多い。しかし、充血性の発疹や顔面の発赤はほぼみられなくなったという。まだ工夫の余地が大きいと思われる。悩む。基本線の血熱は間違いがないと思われる。細かい点を再検討。

昼休み。近所のコンビニへ。
困ったことに栄養価より時間を優先。足りない栄養素は他で摂取する。自分はミネラルが不足しやすい体質。現代の食事全般がミネラル不足だが…野菜不足とミネラル不足にプラスするものは自分のストレスに使う漢方と一緒に摂取。
食事が終わったら、メールのチェックなどをしつつ、薬剤師会や大学同窓会の公務などを。暇なときはボーっとネットなどをみている。

午後一人目。偏頭痛。
経過は良好。漢方を開始してから発作はなし。方向性はよいと思われる。
食養生のポイントはかなり守っている、素晴らしい。

午後二人目。アレルギー性鼻炎。
もうかなり良くなってから日数もたっている。悪化する傾向なし。養生のポイントを確認して、最小限で。

午後三人目。高コレステロール血症。
1年前に一度漢方で下げ、「さすが唐沢さん」「いや、うちの師匠がスゴイんですよ」なんてやってたのが、1年たってまたLDLが上昇…ガックリ。
しかし、方法論は同じ。以前にとった適量を検討する。

ここでティータイム。ずっと続くとさすがに疲れちゃうんで、適宜休憩する。

午後四人目。潰瘍性大腸炎。
当初の落胆ぶりと修行僧のような生活はどこへ行ったのか、粘血便がなくなり、諸症状がなくなってからは、まあまあ気ままにやっている…。
血液検査でCRPも範囲内。良好だが、一応食養生には釘を刺し、再発防止の漢方のみを再チェック。全員こんなに上手く行くわけじゃないんだよ!と念を押す。

午後五人目。緑内障。
緑内障は漢方のみでは対応しない方針なので、眼科の治療を必ず受けて検査結果も教えてもらう。細かい数字は忘れていたようだが眼圧は良好と言われたとのこと。
点眼剤の種類なども変更なし。交感神経緊張タイプ(なかなか短期間に良くなるものではない)に用いる漢方と目に対しての補助剤を再確認。


といった感じでもう頭の中がグルグルになる一日である。※プライバシーの関係上、実際の一日ではなく、数日の様子をシャッフルした。

夜は夜で、気になったことを調べたり、師匠に電話したり(師匠には悪いがこっちも必死なので遠慮はしない)、片付かない公務をやっつけたり、何もなければ(あっても飽きたら)LINEで友達呼び出して飲みに行ったり…である。

なかなかしんどい仕事だなーと思うが、仲間がいるからやっていられる。
漢方に興味のある薬学生や、薬剤師さんとお話する機会があるが、実際にどんな感じの仕事なのか想像ができないようだし、長い付き合いの友達であっても僕が二日酔い防止の薬ばっかり売ってるんじゃないかと誤解している節もあるのでちょっと書いてみた。

からさわ薬局の漢方相談はしつこいですが完全予約制です
フラッと来られても相談はお受けいたしません。
また、費用もそこそこかかりますから「ちょっと漢方もどうかな〜、話だけ聞いてみたいな〜、ちょこっとだけ試してみたいな〜」という方はお断りしています。