2025年10月10日金曜日

下手をつとめるということ

しばらく前ですが、とある漢方薬局の先生が書かれた文章を読む機会がありました。それを書かれた先生が師となる先生と初めてお会いしたときの話なのですが、師となる先生は何も聞かずに自分のことをひと目見て「あなたは〇〇湯」といきなり言ったので驚いた、というような内容でした。

それだけすごい先生だったという話なのでしょうが、私はこの話を読んで以前に昭和の漢方の大家であった大塚敬節先生が書かれた豊浦元貞という江戸時代の漢方医の話を思い出しました。

豊浦元貞が門人にあてた手紙をまとめたものが「豊浦遺珠」という書物になって残っているのですが、その中で元貞が「医者は下手をつとめなければならない」と言っており、大塚敬節先生がそれに共感されているのです。

大筋をまとめると、「世の中には不問診の大家と称して、顔をみるだけで病気がわかるとか、脈だけで病気がわかるとか、いかにも上手らしく名人らしく振る舞うものがいるが、自分は脈をみて腹をみて、飲食の多少、口渇の有無、大小便の通利の状態、色までもたずね、また気分の良し悪しなどを細かくたずね尽くして、そのあとで初めて診断をするようにしている。上手らしく名人らしくやろうとするからかえって病気が見えない。自分は下手をつとめ、名人になろうとは夢にも思わない」と、元貞は門人に常々言っていたそうです。

大塚敬節先生は「下手をつとめるとは、誠をつくすことであり、誠をつくすことが名人への道である」と結んでいます。

漢方の業界にいるとすごい先生は確かにいらっしゃって、鋭い洞察力でピシャリと言い当てる場面を幾度か目にしてきましたが、私はそういうことをする勇気もないし、そんな能力もありません。この話を思い出し、凡人の自分はあらためて「下手をつとめる」ことに徹しようと思って励んでおります。


札幌市中央区の漢方相談薬局

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2025年9月30日火曜日

漢方の厳しいところ

四物湯という漢方薬方があります。

非常にシンプルな血に働く薬で、同業者はそんなに使っていないようですが、からさわ薬局では結構な量を使います。


単独では用いることはなく、他の漢方薬方と組み合わせます。

苓桂朮甘湯と四物湯の組み合わせを連珠飲(れんじゅいん)と呼び、黄連解毒湯と四物湯の組み合わせは温清飲(うんせいいん)と呼びます。


最初から組み合わせて作らせた製剤がありますが、実際の臨床では必ずしも既製品の1対1の比率ではないことがあります。


温清飲だと思ってだいぶ良くなっても、あと少しが上手く改善しないとき、黄連解毒湯と四物湯に分解してそのバランスを整えるととても良くなることがあります。


方針は合っているけど、改善しきらない、漢方にはそんな厳しく残酷なところがあります。

しかし、それをやらなきゃな…と思っています。



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2025年9月19日金曜日

腎結石を漢方で治療

昨年、調剤店舗のスタッフが、腰痛を訴えて、限局的な痛みだったので結石かな?と思いましたが、念のため病院を受診してもらったらやはり腎結石でした。


じゃ、漢方の煎じ薬を作ってあげるから飲んで治してみる?と話したらやってみるとのこと。


お客様には自分で煎じてもらっていますが、スタッフには私が毎日煎じて容器に入れて渡しました。しばらく飲んでもらっていたら、先日の検査ではちゃんと結石は消えていました。


再発防止にもう少し服用してもらって終了しました。


これまで実に様々な病気の漢方治療を経験していますが、私が薬学生だった頃に初めて買った漢方の専門書「漢方診療医典」を読んだとき、こんなに様々な病気に漢方が効くのかと驚いたものです。


自分の膵臓炎も漢方で治療しました。

みなさんが想像しているより、本当に多くの病気に対して漢方が効くことを多くの先人達がみつけてくれています。


こういった伝統をしっかり実践して残していくことも大事なことだと思っています。


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