2013年8月29日木曜日

漢方雑記:原因不明の胃の症状/円形脱毛症

途中まで書いたものの、公開をしていなかったBlog記事をひっぱりだしてアップしてみます。
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ちょっと前の症例です。

50代の女性。しばらく前からムカムカして胃のもたれが続く。あちこち胃腸科にかかったが一向に改善する気配がないといってご相談にこられました。この方は以前にも、からさわ薬局の漢方で腰痛を治したことがある。

胃カメラなど病院で検査をすると、あるときは「少し胃が荒れている」とか、あるときは「別に目立った異常はないですね」とか…まあ、どうやら特別な異常所見はなさそうだった。

あらためて問診をしていくと、とにかく心配症。そうだ、前から心配症だったし、ちょっとネガティブ思考で取り越し苦労が多い。
ならばと思い、漢方で言う「気滞」を取る漢方薬をメインに考え、糸練功でチェックするとまさにその流れとみられる反応がある。大腸腑病の陰証、気滞と水毒の組み合わせであった。

さて、どんなものか…と思っていたら、2週間後に再び来局されて「2回くらい飲んだところで、ウソのようにすーっとしてきました」とのことだった。2週間たってだいぶよくなり、肩こりもずいぶんと減ったようだという。その後も継続して再発しにくいところまで頑張ってみたいとのこと。

これと似た経験は何度もしているので、私としては珍しくもない症例だが、確かにこういったものは「漢方でこそ」よく治るものだと思うのでここに紹介をしてみた。
決め手は心配症なことであり、これは一種の精神神経症状と考えたほうが合理的かもしれない。

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こちらもちょっと前の症例。

40代の女性。円形脱毛のご相談。後頭部に500円玉くらいの脱毛をみつけ、慌ててインターネットで調べてご相談に来られました。

問診しておおまかな方向は予測し、糸練功でチェックするとその通りと思われる流れ。膀胱腑病の陽証。基本の漢方薬1種類と、最も必要性の高い補助剤1種類を選んだ。一般的に予想される経過をお話しした上で「とにかくあせらずにやってください」と念を押した。

ちょうど2ヶ月ほどしたところで、脱毛部位の外側の方からしっかり髪が生えてきた。予想通り、最初の発毛は白髪が多いが黒い毛も混じって生えてきている。3ヶ月ちょっとたったところで、見た目にはどこが脱毛部位だったのか解らないくらいに中央部分も発毛しており、かなり改善した。
再発しにくいところまで頑張りましょうと、更に2ヶ月ほど漢方と補助剤で経過を見て、漢方治療を終了した。

この患者さんは、インターネットで調べて初めて来た方だったが、なかなか生えてこない最初の2ヶ月も非常に信頼して頑張ってくれたと思う。それがとても良かったせいか、生えてきてからの改善は非常に早かった。

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最初の症例の患者さんは、腰痛を治してからは「きっと先生ならなんとかしてくれる」と、とても信頼をしてくれていた。今でも来局されるたびにそうおっしゃる。
次の症例の患者さんも、初対面ではあったが、信頼してついてきてくれた。1ヶ月であきらめていたら改善しなかった。

もちろん、何でもうちの漢方でなんとかできるわけがない。
それでも「なんとかしてくれる」と思っている患者さんの方が、なかなか決定打が出せない期間も辛抱してくれるので、かなりの率で良くなる。

最初から決定打を出したいところだが、神様じゃないのでそうは行かない。
漢方は不思議なもので、ちょっとした補助剤の組み方でなかなか効かなかったものが急に効きだして改善することもある。

辛抱してくれとは面と向かって言い難いが、なるべく早く改善する方法を毎回悩んで考えているので、それだけはご理解をいただきたい。



2013年8月28日水曜日

掌蹠膿疱症の漢方治療について

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)のご相談がそこそこきておりますし、かなり改善する率が高くなってきていると思います。
指先にまで及ぶと爪の変形なども引き起こし、手袋なしで外出ができないなど、精神的な苦痛も大きな病気です。そんな患者さんが手袋なしでご来局されるようになる姿を見ると、とても嬉しいものです。

掌蹠膿疱症について、悩んでいらっしゃる方はご自身で色々と調べていらっしゃるので、詳しい病態などについては他にゆずるとして、難しい病気ではありますが、現在までの経験から考えると漢方でも工夫をすればかなり改善が望める病気のひとつじゃないかと思います。

私も研究して色々と見つけていますが、基本的な方針については昭和50年代頃までに諸先輩方が書かれている方法論でほぼ間違いはないようです。本によっては三物黄芩湯しか書いてないなんてこともありますが、資料を探して詳しく調べると色んなパターンが書かれています。
私はこれら先人の経験を元に、足りないところを都度探し、より患者さんの個々の病態に合うように検討しています。
余談ですが、平成になって最近の人が書いたものはあんまり参考になりません。昭和40年代〜50年代の方がはるかに本気で漢方をやっています。見習いたいものです。

圧倒的に多いなと思うのは、血熱で燥性のもの。ついで、瘀血で燥性のもの。瘀血は文献上は少陽病瘀血が書かれていますが、臨床経験上は太陰病瘀血が多いと思われます。
やや特殊かなと思ったのは(改善が始まるまでかなり苦労しましたが)、湿性でアレルギー・自己免疫との関連が強いもの。漢方的な病位は少陽病から太陰病に集中しています。

お陰様で今のところかなり成績は良いですが、きっとまた難しい例に出会うのでしょう。
この病気との出会いは、漢方を始めた頃にたまたまご相談されてビギナーズラックで良く効いたのが始まりでした。

こんなにも深く掌蹠膿疱症と付き合うようになるとはその頃は思いもしませんでしたが、今やライフワークのひとつかもしれないと思っています。手荒れ・手湿疹(主婦湿疹)や異汗性湿疹に強くなったのもこの延長にあると思います。

食養生がとても大事なので、ちょっと厳しいご指導をいたしますが、あきらめずにあせらずに取り組めば希望があると思います。