2012年3月1日木曜日

冷え症と漢方薬


婦人向け健康雑誌などで漢方薬が取り上げられるときの定番といえば冷え症。

しかし、冷え症はありふれているだけに、実にバラエティであり、漢方屋泣かせの症状のひとつかもしれません。

札幌も、2月までの厳しい寒さが過ぎ、ホッとしたところですが冷え症の人にはまだまだつらい時期です。

私は寒い夜に地下鉄大通駅あたりを通ると「ひのでそば」に吸い込まれては月見そばに唐辛子かけてすすりたくなります。



さて、冷え症はバラエティで難しいよ…と、逃げてばかりもいられませんので、大まかに「こんなにあるよ!」というところを書いてみます。

まず、本当に冷えているもの。本当にというところがミソです。

漢方で「寒証(かんしょう)」と呼ばれるものですが、表寒(ひょうかん)と裏寒(りかん)があります。

・表寒
ゾクッとする悪寒です。体表面が冷えていますが、感覚的には上半身が中心です。背筋が寒い。深いか浅いかで言えば、体表面ですから浅いです。暖かい所にいるとなんともなくても、寒さにあたると症状が出るのも表寒タイプです。
風邪の初期にゾクゾクして、温かい葛根湯などを飲むとポカポカしてくるのも急性の表寒です。もちろん慢性のものもありますが、どちらかというと冷え症で相談に来る人ではなくて、他の症状(関節痛やらなんやら)で来られる方にみられます。

・裏寒
慢性的な冷え症で相談にこられる方にはこちらが多いです。表寒に比べて、下半身が中心になってくる傾向にあります。ひどくなると末端部の冷えが激しく、毎冬にしもやけになるという方もいらっしゃいます。

更に裏寒のタイプを原因別に分類してみると、

血虚タイプ(けっきょ:貧血タイプ)
→このタイプは熱を伝える血が不足して冷え症に。血を増やす薬味の漢方薬がメインになります。
   
新陳代謝不活溌タイプ
→このタイプは、食べたものを熱にする力の不足と考えられ、胃腸虚弱者に多く見られます。胃腸機能を高める漢方薬がメインになります。

水分停滞タイプ
→体内で水分が停滞、偏在し、その部分が冷えやすくなるタイプですが、例えば尿量が薄くて多いなどの症状を伴うことが多いようです。温性の薬味と水の流れを助ける(利水といいます)薬味の入った漢方がメインになります。


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さて、ここまでは本当に冷えているものでしたが、以下は熱もあるけど冷えもあるややこしいタイプです。ようするに、「熱を作る力はあるのに部分的に冷える」という冷え症です。

血流障害タイプ
いわゆる血行不良ですが、特に下腹部に血流障害を起こすことで、下半身に冷え、上部にのぼせなどが出るものが多く見られます。血流を改善する漢方がメインになります。


交感神経緊張タイプ
一見丈夫そうで冷え症にはみえないのに、手足が冷える人に時々いらっしゃいますが、交感神経の緊張が強く、いわゆる神経過敏傾向により、末梢血管が収縮し、手足の末端部分に冷えを起こします。舌をみると、内部には熱をもっているような状態が観察されます。当然、神経の緊張を抑えるような漢方薬がメインになります。

自律神経失調タイプ
体温の調節機能のトラブルです。ストレスが多い人や、心配症な人などにみられ、基礎体温表をつけている女性では高温期・低温期がはっきりせず、ギザギザになっています。このタイプは神経症状に用いる漢方薬全般が対象になり、簡単には判別できない場合が多いと思います。


これだけみても実にバラエティですよね。

「冷え症には漢方がいい!」のは間違いないと思いますが、だからといって適当な温性の漢方薬を飲めばよくなるものではないこと、その原因や体質を個別に考えながら、じっくりと取り組まなければならないということがお分かりいただければと思います。

私も、もっと研究しないとね…


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