2013年6月4日火曜日

ゴボウ茶にご用心

しばらく前になりますが、大変気になったことがありました。

あるテレビに出ている有名な先生の本を読んで、ゴボウを生のままアクも抜かずに毎日食べていらっしゃるとのお話を聞きました…
ちょっとビックリしたのですが、あとで書店に行ってその本を手にとってみました。

薬学関係の人がみたらあきれる内容なのですが、「ゴボウの皮は朝鮮人参と同じ効果がある」とか、ゴボウのアクに含まれるサポニンが朝鮮人参のサポニンと同じだとかなんとかかんとか…

サポニンが入ってるから朝鮮人参(オタネニンジンといいます)と同じ…?

サポニンが含まれるもの、たくさんあります。
サポニンの語源はシャボン。シャボンの泡のシャボンで、サポニンを含有したものは泡立つ性質があります(界面活性作用)。

生薬でも、桔梗にはキキョウサポニン、柴胡にはサイコサポニン、挙げればキリがないくらいにたくさんあります。

漢方薬で、桔梗も柴胡も朝鮮人参も同じサポニンが入っているから、代わりになるかというとそんなことはありません。

桔梗湯という処方は、桔梗と甘草の二味で出来ています。
じゃ、桔梗の代わりにゴボウと甘草でいいか?朝鮮人参と甘草でいいか?
そんなはずはありません。

桔梗は桔梗。柴胡は柴胡。朝鮮人参は朝鮮人参で、ゴボウはゴボウです。

もちろん、サポニンと言うのは水に溶けた時に界面活性作用のある物質の総称で、桔梗のサポニンと柴胡のサポニンと朝鮮人参のサポニンは化学構造は違います。そもそも、サポニン自体は指標成分にはなっても、それが有効成分とは限りません。サポニンの有効性に関する研究も多々ありますが、だからといってそれがその生薬の働きなのかどうかは決着はついていません。

テレビに出ている人の本に載っているからと信じてしまうでしょうが、怖いことです。
ゴボウはアクを抜いて食べるものです。

食べるものが豊かな現代の私たちは「身体にいいらしい」とか「テレビで身体にいいと言っていた」という尺度で食べるものを選択することがあります。

しかし、本来は身体にいいとかいう尺度で考える余裕はなかったはずです。
どうやって食べて生きていくかです。
米や芋があれば、わざわざあのゴボウを食べたでしょうか?

どうしても食べるものがなくて仕方なくゴボウを食べたと思います。
でも、そのままではアクが強くてとても食べられたものじゃない。でも、アクを抜くと食べられると発見して食べられるようになった。
生きるための知恵として伝わってきたはずです。

まあ、これは想像の話ですからどうか解りませんが、加工調理によってそのままでは食用に向かないものをいかにして食べられるようにしてきたか、それも食文化の大事なところだと思います。

これは食べられる、これは食べられない、実は経験で判断するしかありません。
先祖代々食べてきたものは、ほとんどの人が食べられる。食べて処理をする能力が遺伝的に備わっているわけです。魚を食べてきた民族は魚を代謝して同化する能力に優れ、肉を食べてきた民族は肉を同化する能力が優れています。

伝統的な食文化と個々に備わった遺伝的な処理能力と、その人の体質を考慮して食養生を考えるべきです。
私個人の感想としては、アクを抜かないゴボウを食べ続ける勇気は必要ないと思いました。

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