2012年5月21日月曜日

ばね指(弾発指)の漢方治療


女性の患者さんから、ばね指の相談を受けました。

左手の親指を曲げて戻すときにスムーズに戻らない。みると曲げて戻すときにひっかかる感じが強く、カクンとなる。曲げ伸ばしをすると痛みもある。
西洋医学的には対症療法としてステロイド注射、いずれ手術といわれる。(ステロイド注射は発症後に一度受けたとのこと)


漢方医学的には末端の血流改善に働く温性の漢方薬で改善した事例が学術誌や先輩たちから報告されている。問診をするとやはりかなりの末端冷え性。一般的にばね指に多いのはゴルフやテニスなどのスポーツで酷使したものが多いらしいが、そういった原因がみあたらないため、体質的なものと思われる。

舌診は微白苔、潤で太陰病位の様相。初発部位は左親指で、現在も左親指にばね指の症状があるが、右も若干腫れぼったい感じがあったという。

まず現在症状のある左親指に絞って糸練功で確認していくと学術誌で報告のある末端冷え性に対する漢方薬が適する反応が確認できる。報告通りの漢方薬をひとつ提案して経過を見ていただくことにしました。

約1ヶ月後、ばね指の症状はまだあるが痛みは減少。患部が柔らかくなった感じがする。
1ヶ月半で腫れた感じと痛みはかなり減少した。手を広げて指を伸ばすとまだ若干痛むが、概ね良好な様子。

そのまま同じ漢方薬を続けたところ、2ヶ月半ほどで左親指のばね指の症状は消失した。


「手術をしなくて済んだので良かったです」と喜ばれたのだが、なんと不思議なというか残念というか、今度は右の親指にばね指症状が出て来たという。

左親指はまったく症状がなくなり、スムーズに曲げ伸ばし出来るようになったところから考えると、漢方的な方向性は間違っていないと考えられる。より完成度を高める方法を探す。患部と全身状態を参考に、基本の漢方薬だけでは消えない部分は水滞がやや強いためではないかと思われた。

基本の漢方薬と同じく温散に働き、水を動かす補助剤を選んで提案し、基本の漢方薬に併用して経過を見てもらった。

3週間後、右はまだひっかかるが以前より曲げた後に戻しやすくなった。左親指に再発はない。同様にして引き続き経過をみている。

スポーツなどで指を酷使したばね指に対しても同じ漢方薬で効果がみられた例があるが、これらの場合、体質的に末端冷え性とは考えにくい事例もあり、おそらく負荷がかかった結果として部分的にこの漢方の適応する証を呈するのかと思う。例えば、腰痛・坐骨神経痛は人間の構造+加齢の問題で、誰しも起こりうるものであり、体質がまったく違う人であっても漢方的に同じ薬で良くなる人がいるように。


この患者さんの場合は、体質的な末端冷え性のひとつがばね指に現れたと考えると体質改善がしっかりされるまで油断できないのではないかと考えています。

他にも同様の患者さんからの相談があれば、もっと考察ができるのですけど…



キカイダーは病気になるのかな




2012年5月18日金曜日

女性に多い体調不良と漢方

3月後半あたりから急激にご相談の予約が混んで忙しくなり、更に業界の仕事や原稿書きや大学同窓会のイベントなどが重なり、まったくの時間不足でブログ更新も出来ませんでしたが、連休前後の混雑も一息ついたところでようやく再開です。




最近の漢方相談の事例から、女性の体調不良に関係するものをいくつか拾ってみました。


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  • 更年期の発汗症状
40代後半の女性、季節の変わり目に体調不良があり、上半身の熱感と頭部の汗が強いとのこと。漢方の専門医から複数の漢方薬を処方されているがなかなか改善する兆しがなく、ご相談に来られた。

舌診では微白苔で潤、望診して皮膚のキメの状態から更年期の発汗に用いる漢方の中で最も虚証体質に用いる漢方薬を候補に。服用して3~4日で頭痛などの不快症状が軽減され、1ヶ月ほどで頭部の発汗はかなり軽減された。

しかし、その後も冷水を飲むと発汗するなど、落ち着いたりまた少し症状があったりを繰り返す。体質改善に時間がかかるタイプなのだが、なんとか1日も早く突破したいと調べていくと水の働きに何かありそう。基本の漢方薬に加えて水に作用する補助剤を検討。

温性で気と水に発散性のある補助剤を組み合わせたところ著効。早期に症状が消失したので、再発しないようにもう少し頑張れば乗り切れるのではないかと経過をみている。

  • 月経時の頭痛
月経時期におこる不調の中で、頭痛の相談がたまにある。

一例は30代の女性、月経近くになると吐き気を伴う頭痛がある。10代後半から出ているらしい。手足の冷えと吐き気から、陰性の頭痛に用いる漢方を候補に選ぶ。最初の月経時には頭痛があったが、その次から頭痛が軽くなった。冷たいもの、生野菜・海藻類を控えてもらい、漢方を続けると3ヶ月ほどで全く症状が出なくなり漢方治療を終えた。

もう一例は30代の女性、数年前から月経前に耳から頭にかけての痛み、だるさ、吐き気がある。頭痛の専門医の治療を受けたが改善されないとのことで相談に。
望診、問診内容から陰性の頭痛のタイプとみられ、候補の漢方を試したが…2回目に検討したときに、やや陽証が混ざっていることに気がつく。候補の薬方を考え直し、やや陽証で婦人に使う独特の気剤が多い漢方薬に切り替えてみたところ、次の月経から頭痛は半分くらいに軽くなった。継続治療して1/10くらいになったという。再発防止までしっかり治したいと思っている。

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とまあ、こんな調子ですが、工夫すればまだまだ出来ることがある!と信じて研究しています。

来月から大学の講義もあります。ますます限られた時間で色々なことに挑戦していかなくてはなりませんが、挑戦していくこと自体が何より楽しいと思っています。


女性の体調不良にもわりと強い、からさわ薬局の漢方相談は完全予約制です。


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